飼い主さんに知ってほしいこと

犬の自宅出産|分娩の流れにそって準備と注意点を獣医が解説!

前回の記事では犬の交配から出産前までの事についてお話しました。
今回はいよいよ分娩編です!

この記事は…

犬を自宅分娩させる時の準備注意点を、流れに沿って解説しています。

出産(分娩)が始まる前に準備するもの

産箱、ペットシーツ、毛布
産箱はダンボールがいいです。何個か用意しましょう。絶対に汚れるので、その度に新しいものに取り替えると使い勝手がいいです。大きさは上の写真を参照にしてください。犬のサイズを考えて狭すぎず、広すぎないものを選んでください。

体温計
母犬の直腸温(肛門から3cmくらい奥)を測るために必要です。分娩が始まる10時間ほど前に、ほとんどの犬は体温が37.4度以下になります。飼い主さんが見極めるいいサインになりますので、体温は計りましょう。

タオル
子犬が生まれた時、しっかり産声をあげない子や汚れてしまった子をこすったり拭いたりする時に使います。フェイスタオルくらいのものが使いやすいです。1頭につき2枚は使うと思って胎子の数を考えて用意してください。

タコ糸、ハサミ、ビニール手袋
へその緒を縛って切る時に使います。不衛生なものはダメですが、滅菌まではしなくても大丈夫です。

はかり
子犬の重さを計ります。毎日体重が増えているかチェックが必要になりますので、体重測定は必ずしなければダメです。はじめはキッチンの軽量ばかりでOKです。

哺乳瓶、犬用ミルク
母犬が育児をしないなら、飼い主さんが全てやらなければなりません。子犬は数時間ミルクが飲めないと、すぐに低血糖状態に陥り、ひどいと死んでしまいます。そのため、うまく飲めないなら、母乳にこだわらず人工哺乳を始めるべきです。

出産(分娩)の兆候

BAMBI
BAMBI
犬によっても個人差はありますが、大体みんなこんな感じで落ち着かなくなります。
人間と同じですね(^-^)

・トイレが近くなる
・巣作り行動をする(床を掘ったりタオルを丸めたり)
・精神的に不安定になる(落ち着かない様子、異様に甘える、気が短くなり怒る)
直腸温度が37℃まで下がってくると、10時間前後で出産が始まる→目安としてわかりやすい。直腸温を測る時は、少なくとも3cm以上体温計を肛門から奥へさしてください。さし方が少ないと、肛門付近の温度を計っている事になり、体温は低く出ます。

いよいよ出産(分娩)!!

正常分娩の進み方

BAMBI
BAMBI
いよいよ分娩です!
勿論一人で産める子もいます。しかし最近の人気犬種は超小型犬が多く、陣痛が微弱だったり母犬に対して子犬が大きかったりする事も多いので、飼い主さんは目を離さず産み終わるまでお付き合いしてあげてくださいね。


最初に模式図で分娩のイメージをつかんでください。
犬は人と違い、Y字型の子宮をしています。こんな感じで左右に胎子がいる事が多く、胎子がだんだん下がってきて出産に至ります。交互に出てくるとも限りません。はじめの子が難産体位で詰まってしまうと、全滅します。

※犬の場合は、人ほど逆子は気にしません。頭から出るのが正常ですが、逆子でもおおかた問題なく出産します。

分娩の進み方

1頭目の胎子が出る
↓ …比較的すぐ
1頭目の胎盤が出る
↓  …普通は30分以内
2頭目の胎子が出る
↓ …比較的すぐ
2頭目の胎盤が出る
↓ …普通は30分以内
3頭目の胎子が出る
↓  …比較的すぐ

こんな感じで進みます。

※1頭生まれるごとに胎盤が出て来ますが、犬が食べようとしたら取り上げてください。昔は、食べさせると栄養がつく、とか言われてましたが、下痢するのでやめたほうが無難です。

※普通は30分以内で次の子の分娩が始まりますが、あくまで目安です。もっと長い時間たってから正常分娩が再スタートする事もありますし、次から次へと出てくる事もあります。

胎子が産まれてきても、胎子の包まれた袋を破らず知らんぷりしている母犬がいます。特に母犬が初産の時に見られます。その場合は、飼い主さんが袋を破ってへその緒を切ってあげてくださいね。背中をさするとキュンキュン鳴きます。なるべく早く産声をあげさせてください。口の中に液が詰まって鳴けない時は、タオル全体で子犬を包んで、首がぐらつかないようにしてタオルごと子犬を振ってください。それができなければ、口を開けてガーゼで液体を拭き取ってあげてください。この辺の感覚は、人間の出産とほぼ同じです。

危険!こんな時はすぐ動物病院に連絡を!

※Happy dog life  ブリーダーブログから画像をお借りしています
犬の胎盤が剥がれると上の写真のように緑色の汁が出てきます。この写真のように、分娩時に汁が出てくるのは正常ですが、この汁が陰部から出ているのになかなか胎子が出て来ないのは良くないです。

緑色の汁が出てくるのに胎子が出てこないということは、胎盤が剥がれているのに外に胎子が出てこられない、ということ。つまり、子宮の中で胎子が酸欠状態になっている、ということです。このままだと死んでしまいます。この状態は緊急です。すぐ動物病院に行ってください。

緑の汁だけ出てきて胎子が出てこない時、多くの場合中で胎子が詰まっています(体位が良くなかったり、頭が大きすぎて骨盤を通れないため)。
また、母犬の陣痛が微弱すぎて力まないことが原因の場合もあります。

動物病院でそのまま残りの胎子は帝王切開になることも多いですよ。

BAMBI
BAMBI
自宅出産にこだわりすぎると良くないですよ!出ない時は何しても出ないんです。
早く決断してお腹を切らないと全滅する可能性もありますので、気をつけてください。

※お産の時、正確な胎子の頭数がわかってないと焦ります…。
必ず出産予定日1週間前くらいにレントゲン撮影をしておきましょう。

出産(分娩)が終わったら

分娩直後から行う事

①性別の確認、奇形の有無を確認をしよう

・犬の場合、猫と違って陰茎がお腹にあるので、性別は瞬時にわかります。

・子犬たちの奇形がないか確認しましょう。
奇形は色々ありますが、比較的多いのが上の写真のような口蓋裂(こうがいれつ)です。
上顎に先天的に穴が空いています。口蓋裂の子犬は、ミルクがうまく飲めず育たない事も多いです。穴が小さければ、咳をしたり肺炎になりながらも生き延びる子もいます。ある程度大きくなってから、口蓋裂を埋める手術をする事になります。

②子犬のへその緒をしばろう

母犬が噛みちぎってそのまま、という事もダメではないです。自然界ではみんなそうですから。しかし、へその緒を縛ることで感染のリスクが減るので、写真のようにお腹から少し離して縛ってあげることをお勧めします。

③体重を測ろう

数週間は毎日体重を計りましょう。
これは、子犬が確実にミルクを飲めているかの一番わかりやすい指標になるからです。

体重が増えていかないのはミルクを飲めていない証拠ですので、そうであれば人工哺乳に切り替えます。
犬の胎子は半日ミルクを飲まないだけで簡単に低血糖になります。

④初乳を飲ませよう

犬にとっても人と同じで初乳はとても大切です。体に必要な免疫抗体をたくさん含んでいますので、なるべく48時間の間にしっかり飲ませたいですね。
しかし、飲まない、もしくは母乳が出ないなら人工哺乳をしてください。初乳は飲ませるのがベストですが、飲めずに人工乳になってしまっても育ちます。
何も飲まずに半日以上たつと、急激に弱ってきて、亡くなる可能性もありますよ。

⑤母犬がきちんと子犬の世話をしているかどうか観察しよう

犬も個性があるので、育児ができない子は本当にできないです^_^;
子犬をほったらかし、だけならまだいいんですが、まれに潰して知らんぷりしていたり、どんどん数が減っていったり(食べてます!)する事もあります。信じられませんが…。

良く観察してくださいね(^-^)

分娩後5日〜1週間で行う事

⑥断尾が必要な犬種は断尾を検討しよう

3分ほどの処置です

断尾に関しては反対の方もいるかもしれません。確かに見た目だけを気にして断尾をするのはとても可哀想です。動物虐待、と言えるかもしれません。

しかし、世の中がまだそのような考え方についてきていない、という事も事実です。
断尾する犬種は、断尾していないとやはりどこか不恰好に見えます。そして売れ残る可能性が高いのです。売れ残ると、その子の人生は不幸になる可能性も出てきます。

そのため、断尾はしておいた方がいいのかもしれません。(あくまで私の意見ですが…。)

ちなみに、生後5日くらいで行う断尾はさほど出血もしませんし、局所麻酔を注射すれば痛みもありません。処置も3分ほどで終わります。
健康被害もほとんどありませんので、世の中で問題にされているほど、ひどい事ではないとも思います。(成長してからの断尾は大変です!)

ただ、コーギーの断尾は生後5日であっても少し注意が必要です。コーギーは根元から断尾する犬種なので、他の犬種の断尾より出血量も多く、カットする場所が深すぎると神経を傷つけたりする事もあるのです。コーギーの断尾は、反対派の人も少しずつ増えてきていますので、今後断尾をしない犬種になるといいなあと思っています。

⑦狼爪がある子は動物病院で狼爪を切ろう

 

後ろ足の親指(狼爪)

※シェルティブリーダーMAGIC WORLDさんより写真引用させていただいています

後ろ足の親指のことを狼爪と言います。前足の親指もありますが、こちらはショードッグでなければ基本的にはカットしません。
後ろ足の狼爪は、場所的によく引っ掛かるところについています。のちのち運動している時にひっかかったりして出血する事も多いので、断尾と同じく生後5日くらいでカットした方がいいですね。
狼爪は局所麻酔もいらないくらいです。痛みもほとんどないので、小さい頃に取ってしまいましょう。

分娩後1ヶ月〜1ヶ月半で行う事

⑧初めての混合ワクチンを打とう

あまり早すぎると、母犬の移行抗体(母乳からもらうもの)があるので意味がありません。
だいたい1ヶ月から1ヶ月半くらいを目安に初回ワクチンを打ちましょう。
子犬の時期は、現在の日本では3回打ちが主流です。初回ワクチンが遅めだと2回打ちのこともあります。
動物病院で相談してくださいね。

まとめ

飼い主
飼い主
犬の出産って、本当に手がかかりますね…。
ちょっと想像と違いました。
BAMBI
BAMBI
そうなんです。可愛い子犬を想像して、知識もないまま出産させようとする人がいますが、すごく危険だってことがわかりましたか?
飼い主
飼い主
本当にそうですね。
準備をしっかりして、動物病院とも連携を取って、母子ともに健康で出産させたいです!
逆に、それができないんだったら産ませるべきじゃないですね。
BAMBI
BAMBI
出産は感動的です。体験するとすごくいいと思うんですが、犬のためにもきちんと勉強しましょうね!